愛着障害 と カサンドラ症候群
「障がい」というとき、一般には⾃身の身体に何かしらの要因があって、それが心身の不全と⾔う形で現れるものをのが指していると思います。しかし、そうでない場合もあります。
現役時に出会った児童生徒の中にも、そして、いま、支援という形で関わっている方の中にも、「心身の機能に障がいがある」と認められるのですが、その「障がいの要因」が⾃分⾃身には無く、他者(主には親、配偶者)からの愛情が得られないことが要因となり、さまざまな困難や生き難さが生じている方たちがあります。一例としては、「愛着障がい」「カサンドラ症候群」と呼ばれるものがあります。
私たちは誰もが、様々な機会に様々な人との出会いがあります。職場や学校でこうしたことに悩む方との出会いもあることでしょう。これからのことを理解しておくことは、相互の関係を健全なものにしていくためめに大切なことであると思います。二つの事例について紹介します。
「愛着障がい」
不慮の出来事による育児不能の他に、子育てよりも自分たちの楽しみを優先させる未熟で刹那的な親たちの生活姿勢、薬物依存、DV、被虐待経験、貧困、重度な情緒・精神障がい等の問題により発生することがあります。子どもの知的な発達や身体的な発達にも大きな影響があり、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の様相を示すことがありますが、本人に対する発達障がいの対応では改善しません。親をはじめとする家庭環境の改善なくして解決への糸口はつかめません。
現役時にも、これに苦しむ児童生徒とたびたび出会いました。どんなに親身に関わろうと、教員や他者が親にとって代わることはできません。しかし、まわりの大人たち(保育者や教員など)が、このことを理解したうえで、児童生徒に接していくことが大切です。児童生徒が最初は反発や拒否という行動に出てくる場合が多いのですが、そこを粘り強く、あきらめ見捨てることなく関わっていくことが必要です。そして、親に対して親としての自覚を促すような対応も必要です。これが大変に難しいことなんですね。直接かかわった事例が幾つもありますが、大人はそうそう変われるものではありません。上手く運んだ事例もありますが、解決への糸口さえ見いだせないような事例もありました。「対決」のような形は望ましいものではありませんが、時にそのような状況になることもありました。
この「愛着障害」という事例は、ますます増えているように思われます。教育の現場に身を置く皆さんのご苦労を思うばかりです。