GS1250ADV SUGURU’s DIARY

還暦超のアルピニスト・バイク乗りの極めて平凡な日常

小諸なる古城のほとり…     近隣の小さな旅

 藤村の第四詩集・落梅集所載の「千曲川旅情の歌」に歌われた小諸市に、家内と近隣のドライブで訪れました。家を出た時は他の所を考えていたのですが、和田峠を越えて長和町から上田市に入るあたりの道を走っている時、急に思いついて小諸に向かうことにしました。

 さて、小諸ですが…。かつては信越本線の特急「あさま」の全列車が停まる駅、小海線の始発終着駅でした。駅前には「東急百貨店」があり、結構な賑わいのあるところだったのですが、平成9年(1997年)に開通した「長野新幹線」は、軽井沢→佐久→上田を通り、小諸はスルーされてしまったこともあり、最近は地盤沈下が言われていました。しかし、古くからの城下町、北国街道の宿場町でもあり、小諸城址、懐古園を始め、趣ある街並みと風情が残っている土地だと思います。
 ※「長野新幹線」 平成27年(2015年)に金沢駅まで延伸開業した際に「北陸新幹線」と統一され、この呼称は消滅しました。

かつて「小諸東急百貨店」がありました。
特急「あさま」も全列車が停車する
東信地方の基幹駅でしたが…。

駅前の広場を整備して、
憩いの場を作ろうとの工夫と努力が感じられます。

 クルマを駅前駐車場において案内を見ていると、案内の方が声をかけてくださって、小諸で行っている市街周遊カート(下記リンク)のお誘いをしていただきました。
 これがなんと無料で案内付き!小諸の路地をゆっくり回ることができました。

◇こもろ観光局Komoro Tourism Bureau
https://www.komoro-tour.jp/
◇スマートカート egg | 縁JOY!小諸(縁こもろ)
https://enjoy-komoro.jp/introduce/smartegg/

六人乗り電動カート 
小回りが利き、静かで落ち着いた乗り味でした。


 小回りのきく6人乗り電動カートで、細い路地を静かに見て回ることができます。地元出身の方が、観光ガイドブックには載らないであろう様々な地元情報を語ってくれました。生まれ故郷のこの地に、大変に愛着と誇りとをもっておられることも感じられて、とてもいいひと時でした。本当に偶然でしたが、素敵な出会いに感謝です! 
 30分あまりの一巡りでしたが、小諸駅周辺の中心市街地の概要がつかめました。この後は、案内していただいて心に残った店舗や場所に、徒歩あるいはクルマで回ることとしましょう。

 始めに徒歩3分ほどの「懐古園」へ。よく写真で紹介される立派な門があるのですが、現在一部修繕中でした。懐古園藤村記念館と合わせて何度か訪れているので、時間の都合上今回は鑑賞しませんでした。紅葉が映えるのももう少し後ですしね。

観光案内によく登場する門は修繕中

 ここで、「小諸なる古城のほとり」と「島崎藤村」に関することを少々…。

小諸なる古城のほとり
 
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
緑なす蘩蔞(はこべ)は萌えず
若草も藉(し)くによしなし
しろがねの衾の岡辺
日に溶けて淡雪流る

あたたかき光はあれど
野に満つる香も知らず
浅くのみ春は霞みて
麦の色わづかに青し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ

暮行けば浅間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む

 上記引用は島崎藤村「小諸なる古城のほとり」という詩です。
 藤村は「若菜集」「一葉舟」「夏草」「落梅集」という4冊の詩集を出版していますが、この「小諸なる古城のほとり」は「落梅集」に収められています。最初に発表されたのは明治33年(1890年)で、その時の題名は「旅情」でした。
 藤村は明治32年(1899年)に、この地・長野県北佐久郡小諸町に、「小諸義塾」の英語教師として赴任します。6年間をこの小諸町で過ごしました。この時期に藤村は冬子と結婚し、長女みどりも生まれました。小諸を中心とした人びとの暮らしや千曲川の自然を写生した随筆「千曲川のスケッチ」とあわせて、この「小諸なる古城のほとり」を味わうといいと思います。この詩は、小諸生活二年目の春に作られたと言われます。藤村29歳の時でした。
 藤村はこの小諸の時代に、詩作から小説に転身します。「破戒」はこの頃に書き始められたものです。

 懐古園のすぐ近くには「小諸義塾記念館」があり、同じ敷地に「惜別の歌」の歌碑が置かれています。
◇小諸義塾記念館
 【https://www.komoro-tour.jp/spot/castle/kaikoen/kaikoen12/

「遠き別れに たえかねて」という言辞から始まる『惜別の歌』。
「悲しむなかれ 我が友よ 旅の衣を ととのえよ」の言葉も印象的ですね。

   

 作曲は、中央大学の学生であった藤江英輔さんであり、歌詞は、島崎藤村の詩集「若菜集」に収録された「高楼(たかどの)」に基づくものとされています。藤村の「高楼」の詩は、妹が嫁に行く姉に別れを告げる内容ですが、「姉」を「友」に差し替えて作曲されたとされています。なるほど、三番の歌詞にある表現…「くれないの くちびる」「黒髪」に名残が見えますね。歌碑の隣にこの曲が流れる装置があったので、静かな空気の中で鑑賞していたのですが…。突然正午を告げる曲〔「上を向いて歩こう」〕が近くのスピーカーから大音量で流れてしまいました。

 その後「丁子庵」さんという趣ある店構えのお蕎麦屋さんで美味しいお蕎麦をいただきました。長野県はどこも蕎麦美味しいですが、その中でもレベル上だと思います。
◇「丁子庵」
https://choujiya.jp/

 その後、「彩本堂」さんというサイフォン抽出特化したコーヒー店で美味しいコーヒーをいただきました。ここは繰り返しお訪ねする価値大のお店だと思います。
◇「彩本堂」
https://www.siphon-do.com/main

 
 市街地を発つ前に、老舗醸造元の「山吹味噌」さんでお味噌他何点かのお土産を買い求めました。
◇「山吹味噌」
https://www.yamabukimiso.com/

 小諸の魅力再発見できた一日でした。

 この後、自宅へ戻る道すがら、「布引観音」様に参拝しましたが、それについては改めて書き起こしたいと思います。

 近隣で、素敵な小さな旅ができたことに感謝!