GS1250ADV SUGURU’s DIARY

還暦超のアルピニスト・バイク乗りの極めて平凡な日常

山と語り流れに思ひ 風に聞き雲と遊ぶ     うるはしき心の調べ あめつちとともに

山と語り流れに思ひ 風に聞き雲と遊ぶ
  うるはしき心の調べ あめつちとともに
 山登りやトレランを楽しんだり、はたまたバイクで気儘な旅に出かけることを肯定してくださるような言葉ですね。
 この詩は、本県の上伊那郡宮田村に生まれた昭和の文芸評論家・思想家である唐木順三先生の作によるものです。唐木先生の直筆になるこの詩を刻んだ石碑が、当地の宮田中学校に大切に伝えられています。(写真)
 唐木先生が生前に、宮田村の子どもたちを念頭において作詩していたものと伝えられています。唐木先生が七十六の御年にお亡くなりになったとき、ご遺族から中学校へと贈られた石碑であるそうです。宮田中学校の学校関係者はもちろんのこと、地域住民の皆さんにとって、宝ともいえる存在であると思います。故郷の子どもたちが、郷土を誇りに思い、郷土の自然や人々を愛し慈しみ、心豊かに成長してほしいという心からの願いと祈りを感じるメッセージです。この詩には曲がつけられて、卒業式などの学校行事で大切に歌い継がれているとのことです。
 唐木順三先生は信州大学京都大学で学んだ後に教職に就き、その一方で文芸評論執筆をなされました。膨大な著書を後世に遺されました。その中で、自分が最初に出会ったのは高校時代。大変なクセ者の国語教師との出会いによるものです。この御方、自分の名前「梅津(UMEZU)」の語呂合わせなのでしょうが、私たち生徒が提出した課題の検印に「無滅(MUMETSU)」とサインして返していました。純粋無垢でさわやかな高校生(?)に「無」だの「滅」だの…なんだこいつ! と思いますよね。なんともぶっきら棒な物言いの御仁でしたが、へそ曲がりな自分は嫌いではなかったんですよね。
 そんな妙な教師と少人数グループで読み込んだのが、『日本人の心の歴史(上・下)』(筑摩書房)でした。この本で語られている文脈そのものも、様々な思考を巡らすことのできる格調高く貴重なテキストですが、それ以上に、その内容に刺激されたことを契機として知りたくなること、原典に当たり深く読みたくなることがたくさん出てくる…ということにおいて、若い時分に巡り会えた素晴らしい一冊との出会いだったと思っています。
 そんな意味では、無表情で愛想のない、あの「無滅」でしたが、確かな力量のある国語教師だったんだなと思います。