GS1250ADV SUGURU’s DIARY

還暦超のアルピニスト・バイク乗りの極めて平凡な日常

Lawrence of Arabia その➁

Lawrence of Arabia その➁
  ~ Brough Superior ~
 トーマス・エドワード・ロレンス(Thomas Edward Lawrence)
 
 映画では語られませんが、彼の生い立ちや青年期の行動を紐解いていくと、そこかしこに「バイク乗り」の魂が息づいていたことが窺えます。少年期における野宿を重ねた単独長距離徒歩あるいは自転車旅行。18歳からは毎年長距離を走り、中世の城郭や十字軍の足跡を訪ねる自転車旅行をしていました。未知の土地への憧憬とストイックな旅のスタイル、大胆かつ緻密な行動規範…等々。孤高な実践者としての強い意志をそこに見ることができると思います。
 ロレンスは退役後に帰郷のウェールズで暮らしますが、そこでも彼はオートバイ乗りであったのです。自国製…その当時は英国製二輪車が世界を席巻していた頃ですね…高性能車である、ブラフ・シューペリア(Brough Superior)というオートバイを愛用していたそうです。当時最先端の超高性能・超高級オートバイ。今で言えばBMW M1000RRとかDUCATIパニガーレなんてところなのでしょうか? 一説では時速100マイル超で疾走していたといわれています。
 彼の胸には、ベドウィン族とともに駱駝を駆ってアラビアの茫漠たる砂漠を疾駆していた日々が間違いなく蘇っていたことでしょう。彼が現代を生きていたら、間違いなくGS-ADVを選んでいたのではないだろうか(…英国人だからTriumphのTigerかなあ)と、私は勝手に思っています。
 そんな彼の最期は、そのブラフ・シューペリアでカントリーロードを走っている時に自転車の少年たちを避けようとしたことによる事故でした。
 この映画はその経緯から始まっています。
 ブラフ・シューペリアの美しい車体を、やや高い位置から見下ろす画面。そこに右からロレンスがオイル缶を手にして現れ、オイルを補給し燃料コックを開きます。タンクに汚れでもあったのでしょうか、ウェスで丁寧にふき取り、視点を移して覗き込み、さらに丁寧にふき取ります。「バイク乗りあるある」ですよね。愛車で乗り出そうとする一連の「儀式」から始まるのです。出発前の期待感、高揚感、そして緊張感というような雰囲気が画面に広がります。この場面は、私たちバイク乗りにこそ共感的に伝わってくると思います。チョークを引きキックペダルで上死点を探してキック始動…等々なんてねえ。昭和のバイクシーンが頭の片隅にある年代の方には刺さるところです。現在では…多くの人は何をしているのかわからない場面かもしれませんけれど…。